エガクのブログ

絵を描く事と、山に登る事と、作業所に通うハンディのある長男と、夫と、東京に居る二男と…

むずかしい判断

秋の高山は状況がころころと変わるので、それに応じた判断ができないといけません。

 

今年は10月に はやばやと寒気が入って降雪があり、

11月に黒戸尾根を歩く予定だった私は 

ありとあらゆる場面を想定して荷造りしました。

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小屋泊ではコロナ対策でシュラフ持参です。

加えて防寒のダウンパンツ ダウンジャケット、

そうは言っても歩きはじめは低山のうえ

私自身汗かきなのでアンダーの着替え、

雪や氷にチェーンスパイク、

念のための10本歯アイゼン、

急なところではストックがわりになるピッケル

水は小屋まででいいので1リットルとちょっと、

それに小屋へのほんの気持ちの差し入れのお酒、

また、

以前の下山で冬靴だったのもあり もちろん靴のせいだけではなく 歩き方の悪さもあって、

爪が当たって辛い思いをし 黒くさせてしまったので、

その対策にトレランシューズもねじ込みました。

そんなこんなでザックにまとめて計量すると10kgでした。

でもそこから最終のお湯ポット、おにぎり、蓋を閉めてからピッケルもつけたので

もう少し増えましたね。

帰ってきてみると、

持参したものはほぼ使い、お守りはアイゼンくらいでした。荷造り成功の山行でした。

 

そういえば

子育て真っ最中で子どもが小さかった時、

あれもこれもと想定して すごい大荷物でしたし、

姑の口ぐせが『大は小を兼ねる』で、

その感覚で作っていた

一年目の山行荷物はすごい量でした。

だけど登山ではそれは通用しませんでした。

 

『荷物の重さは不安の大きさ』

どなたかのSNSで、ガーン!と打たれた言葉です。

後から後から心配になって加えてしまっていたのです。

一泊の冬山登山後、手袋が6個も出てきて自分でもビックリしたことがありました。

予備に一個は指定されていましたが、予備の予備、そのまた予備と直前に詰めていたのです。

荷物を作っている自分を信じろと。

そして軽いほどに 山行中の負担は少なく済むのですから。

 

 

瑞牆山ツアー時に、杉本ガイドさんが声かけしてくれた言葉を思い出しました。

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歩幅は狭く

置いた足に重心が来るように、左右に揺らないように

吐くのを意識して身体に酸素を入れてあげましょう

頑張っている足に酸素を届けて

靴の真上に身体があれば滑りません

 

客が9人居て、全体に話しかけていたようで

実は私に 全て当てはまる事でした。

 

最初に尻もちをついたのは私です。

足の置き方 重心の取り方が『粗い』ということの証です。

 

また、

下りのコースに岩場 鎖場 木道や一本橋があり、

杉本さんの後ろに来るよう言われた時「恐怖のイメージが出来てしまうと、 渡れなくなってしまうのです」

との言葉。

 

ああ、これは思い当たる過去があります。

 

昨年春の黒戸尾根の下りの時、

岩にステップが刻んであってその岩をまわり込みながら降るところで

切れ落ちた黄蓮谷に気持ちがいった途端

心拍がバクバクとし始めてしまい

降りたことがある場所なので技術はあるのに

足がすくんでしまって降りられなくなったことがあるのです。

 

10分ほども居たでしょうか。

もうどうしても次の脚が下ろせません。

鎖を掴んで力の入った腕がブルブルと震え出してしまいました。

 

その時は1人で、 人を待たせていたわけでもなかったので 充分時間を取ることができて深呼吸を数回し、

(ここ越えないと帰れないんだからね)と言い聞かせ、

 

「落ち着け落ち着け、前に降りられたところじゃないか、出来たんだから出来るよ」

と声かけをして

いったん安定している足場に下がり

利き足を逆にしたら

下ろすことが出来たのです。

 

イケイケの気持ちの時って恐怖の入り込む余地がないってことですよね。

それは逆に言えば、自分の未熟さに気がついてないということもあるわけで、周りから見て危なっかしいというのはそういう時かもしれません。

 

確かにあの恐怖を味わって、

その恐怖を自分なりの方法で 自分の力で乗り越えた、

あの時から私の山行が変わってきた気もしています。

 

 

 

今までの山行で、途中で引き返すということはしたことがなかったかもしれません。

今回 目的地が頂上だったところを 判断として頂上を踏まず、

引き返しました。

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奥宮まで行ったので、距離で言えば100mないくらいです。

 

けどその時のペース、

冷たい強風、

その後の下山時間

諸々の条件を考えて自分で判断しました。

(行ったんだから、頂上はどうしても行く)って意地みたいなものは、最近の山行では消えています。

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さて、

そのすぐ下のあたりで登って来た人に「こんにちは」と声をかけたところ、顔を上げたのは単独行の女性でした。

ウエアは最近主流のアースカラーでYAMAPの春山社長のようなモード

ストックも帽子もなく

ザックはデイパックみたいな小さいサイズ、

なによりその日の登山者でチェーンスパイクもつけてないのはその人だけでした。

 

もっと驚いたのはその足運びの軽やかさ。宿泊してないのだから登山口から既に14kmきてるとは思えないようなハイペース!

けれど、危なっかしさはありません。

 

 

こんな人が、天気良いと思い立ったらこんな高山でもサッと来れるんだろうな。

 

春とともに秋も状況が急に変わるし

朝、昼、夜で変わることもあり、

難しい判断に迫られます。

心境に流されることなく的確な判断が出来るようになっていきたいです。