黒戸尾根への思慕
【冬枯れの中で】
想いながら 描きました。
甲斐駒ヶ岳の登山道のひとつ、
黒戸尾根は、長く樹林帯を抜けていく。
紅葉を過ぎて葉っぱが落ちた樹林帯は
夏の薄暗さとは別世界で 地面まで日光が届き、
青い空に美しい枝のシルエットを描いていた。
笹ノ平の分岐あたりだっただろうか、
急登を見上げたとき
落葉樹の中に1本だけ
針葉樹の巨木が
誇らしげに枝葉を広げていた。
葉っぱがとても小さく、コメツガだろうか。
初冬で
日の入りの早くなっていることもあり、
先を急がなければいけなかったが、
そこは気楽なひとり登山。
しばしその姿に見とれていた。
夏になれば葉が生い茂って森の中にまぎれ、
私も その樹を見つけられなくなるかもしれない。
芽吹きの前に、もう一度あの巨木に逢いたいなぁ。
落ち葉ふんで どこまでも落ち葉
種田山頭火の句が
そのままあてはまる、 忘れられない一日だった。